先輩に聞きました2:壹岐友里恵(農林生物学コース)

このコースに進学した動機を教えてください

大学入学時には、学問としては分子生物学に興味がありつつも、途上国支援にも貢献したいと考えていたため、どちらについても学ぶことができる生物資源学類に進学を決めました。1年生の頃は応用生命化学コースに進もうかと考えていましたが、現在の指導教員のお話を聞く機会があり、遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術によって、思い通りの植物を作ることが出来ることを知りました。分子生物学の中でも自分の最も興味があった、遺伝子に関わる研究を行うことで、将来、食糧難に役立つ植物を作ることが出来るかもしれないと感動し、農林生物学コースに進学しました。

卒業研究のテーマ・内容について紹介してください

「細胞質雄性不稔性トマトに対する稔性回復遺伝子の同定」というテーマで、研究を行っています。ざっくり言うと、現在多く流通するF1品種(純系の親品種2種類を交配してできる第一世代)の種子生産を効率化するために必要な遺伝子を見つける研究です。

F1種子生産では、雌親の雄しべを取り除く、除雄作業を行わなければならず、コストや労働力といった面で問題となっています。

細胞質雄性不稔性(CMS)とは、花粉の受精能力がなくなる形質です。F1種子生産の際に、このCMS系統を雌親にすると、除雄作業が必要ではなくなります。しかしながら、CMSの形質は母性遺伝するため、このままでは、F1品種の花粉も異常になり、果実ができなくなってしまいます。そこで、雄親に花粉を正常にする遺伝子を持つ稔性回復系統(RF系統)を用いることで、除雄作業を行うことなく、果実のできるF1種子生産が可能になります。

現在、トマトにおいて稔性回復系統は見つかっていますが、どの遺伝子が花粉を正常にすること(稔性回復)に関わるのかは分かっていません。私の研究では、次世代シーケンサー技術などを用いながら、この稔性回復遺伝子を同定することを目的としています。

将来の生物資源学類の学生の皆さんにメッセージをお願いします

私は、将来研究によって、食糧難に役立つような作物を作りたいと考えています。現在行っている研究では、遺伝子の同定の手法を学ぶことができ、日々勉強になっています。また、コースにおいて、植物の栽培実習があったことも、植物分野の研究者になる上ではとても貴重な経験でした。

将来の研究内容はまだ決まっていませんが、不良環境下で育つために必要な遺伝子の同定などを通して、食糧難に寄与できる研究者になりたいと思っています。